学習指導案の例と書き方のヒント
情報科 STL科学技術研究Ⅰ(学校設定科目) 学習指導案
| 学校名 | 福岡県立明善高等学校 |
| 指導者 | 教諭 松島 拓路 |
| 実施日時 | 9月18日(水) 5時限 |
| 実施学級 | 第1学年7組40名 |
| 実施場所 | パソコン教室 |
本単元では,アルゴリズムとプログラミング及びコンピュータを活用した問題解決におけるデータ構造に関する基礎的な知識と技術を習得させることをねらいとしている。具体的には次のことができるようにする。①順次, 選択, 繰り返しの三つの基本的な構造を取り上げ,これらによってアルゴリズムを表現するのに必要な基礎的な知識と技術を習得する。②プログラムの作成からテスト及びデバッグまでの一連の作業に必要な基礎的な知識と技術を習得する。
本単元は次のような点で価値がある。
①アルゴリズムやプログラミングの知識と技術を,問題解決の活動などにおいて実際に活用することができるようになる。②アルゴリズムの改善により効率的に問題の解決が図られることに気付くことができる。
③物事を抽象化して捉える力や分解して理解する力,順序立てて理解する力が身につく。④自分の意図する一連の活動を実現するためにはどのような動きの組み合わせが必要か,意図した活動により近づくためにはどう改善すれば良いのかといったことを論理的に考える力が育成される。
本クラスは理数科で,入学して半年ほど経過した。1学期には,プログラミング学習の初歩として,6時間かけてフローチャートやアルゴリズムを学んでいる。自身の希望進路として,数学系や情報系に進みたいと話している生徒もおり,情報処理に関心の高い生徒が多い。授業中の課題にも積極的に取り組み,グループ活動にも積極的に参加する生徒が多い。しかし,成果物や日々の実習時の状況を見るとパソコンの操作に自信のない生徒もまだ50%程見受けられることから,中間モニタで操作方法を提示しながら一緒に進めたり,生徒どうしで教えあったりさせるなどの工夫が必要である。
本単元では,アルゴリズムとプログラミング及びコンピュータを活用した問題解決におけるデータ構造に関する基礎的な知識と技術を習得させることをねらいとしている。そのために,まず1学期に6時間かけて教科書(pp.78–91)を使ってフローチャートやアルゴリズムを学習した。1学期は理論を中心に,アニメーション等を用いた学習を行なったが,プログラムの作成は行っていない。そのため,2学期から3学期にかけてプログラミング実習を行い,プログラミングに関する基礎的な知識と技術を習得させる。問題に応じたプログラミングやデバッグ等を行わせることで,論理的な思考力を育む。実習に用いるプログラミング言語は,DNCL(センター試験用手順記述標準言語)を選択した。DNCLは,大学入試センター試験の情報関係基礎で採用されているプログラミング言語で,日本語で記述され,アルゴリズムの記述に適していることからプログラミング及びアルゴリズムの初学者に適していると考えられる。実行環境にはオンラインのプログラミング環境で,DNCLを実行することができるBit Arrowを用いる。
- 基本的なアルゴリズムの構造を理解している。【知識・技能】
- 基本的な構造のフローチャート(または文章表現)からプログラムを作成する技能を身につけている。【知識・技能】
- 試行錯誤しながらアルゴリズムやプログラムを作成することができる。【思考・判断・表現】
- 作成したアルゴリズムやプログラムが正しいかどうか確かめることができる。【思考・判断・表現】
- アルゴリズムやフローチャート,プログラムに興味を持ち,例題などに積極的に取り組もうとしている。【主体的に学習に取り組む態度】
| 第1次 | アルゴリズムの基本構造 | 6時間 |
| 第2次 | DNCL(センター試験用手順記述標準言語)を用いたプログラム作成 | 3時間(本時3/3) |
| 第3次 | センター試験(情報関係基礎)問題演習 | 1時間 |
教師から提示されるDNCL(センター試験用手順記述標準言語)で記述された逐次探索および二分探索のプログラムについて,空欄に入る条件式をすべてエラーが出ないように記述することができる。
- DNCL(センター試験用手順記述標準言語)を用いて逐次探索アルゴリズムと二分探索アルゴリズムのプログラムを実装させる。
- 1学期に学習したアルゴリズムを自分でプログラミングし,実行結果が理論通りになっているか確認させる。
- 同じ動きをするプログラムを2つ提示し,プログラムの書き方は1通りではないことを理解させる。
- 課題が早く終わった生徒には,スモールティーチャーとして周りの生徒の支援をさせる。
・教科書(実教出版 最新情報の科学新訂版)pp.84-87
・プリント
・オンラインプログラミング環境(Bit Arrow : https://bitarrow.eplang.jp/)
| 学習内容・活動 | 教師の支援 指導上の留意点 |
配当 時間 |
学習 形態 |
評価 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 導入 | ○前時の復習を行う。 | ○前時のプリントを用いて,DNCLの構文やBit Arrowの使い方を復習する。 | 10分 | 一斉 | |
| ○本時の目標を確認する。 「教師から提示されるDNCL(センター試験用手順記述標準言語)で記述された逐次探索および二分探索のプログラムについて,空欄に入る条件式をすべて正しく記述することができる。」 |
|||||
| ○探索アルゴリズムについて復習を行う。 | ○逐次探索アルゴリズムと二分探索アルゴリズムについてそれぞれどのようなアルゴリズムか質問する。 | ||||
| 展開1 | ○逐次探索アルゴリズムを実装する。 ファイル名は「Linear」 |
○作業に入る前に注意点として,配列についての復習を行う。 またDNCL独自の関数(要素数( ))についても説明する。 |
7分 | 個別 | ○教員から提示されるDNCL(センター試験用手順記述標準言語)で記述された逐次探索および二分探索のプログラムについて,空欄に入る条件式をすべて正しく記述することができる。 (プリントの記述および提出プログラム) |
| ○作成した「Linear」と同じ動きをする別のプログラムの穴抜き部分を埋め,正しく動くか確認する。 ファイル名は「Linear2」 |
○プリントに自分の考えを書く欄と正解を書く欄を設け,自分の考えを消さないよう指導する。 ○flagの使い方(1学期の復習)を説明する。 |
13分 | 個別 ↓ |
||
| ○早く終わった生徒はスモールティーチャーとして他の生徒の支援をする。 | グループ | ||||
| 展開2 | ○二分探索のアルゴリズムを実装する。 ファイル名は「Binary」 |
○割り算をする際の注意点(“/”か“÷”か)について説明を行う。 | 15分 | 個別 ↓ |
○教員から提示されるDNCL(センター試験用手順記述標準言語)で記述された逐次探索および二分探索のプログラムについて,空欄に入る条件式をすべて正しく記述することができる。 (プリントの記述および提出プログラム) |
| ○早く終わった生徒はスモールティーチャーとして他の生徒の支援をする。 | グループ | ||||
| ○早く終わったグループは発展問題に取り組む | ○FizzBuzz問題のプログラムを実装させる。プログラムの提示は行わず,考え方のヒントのみ与える | 個別 | |||
| まとめ | ○本時のまとめを行う。 ・逐次探索アルゴリズムと二分探索アルゴリズムについて ・プログラムの書き方は一通りではないこと |
○次回は入試問題にチャレンジすることを伝える。 | 5分 | 一斉 | |
| ○コンピュータをシャットダウンする。 | ○生徒のパソコンをロックする。 | ||||
| ○プリントの回収を行う。 |
評価方法を決めるフローチャート
- 単元観とは,どのような単元か,その単元を教える意義を書きます。
- 生徒観とは,どのような生徒かを書きます。中学校で学んでいることや前の単元までに学んできていることの既習事項を書いたり,つまずきやすい点などを書きます。
- 指導観とは,単元観と生徒観を踏まえて,「だからこそ,このように指導する」という教材・活動・評価の工夫を書きます。なぜその教材・ツールを使うのか,なぜそのような手立てを講じるのかを書きます。
単元の目標は,単元全体(数時間〜十数時間)の到達点です。国立教育政策研究所(2021)の「内容のまとまりごとの評価規準(例)」や各事例の「単元の評価規準」がこのレベルで,文末は次の形が基本となります。
| 観点 | 文末(国立教育政策研究所 2021, p.33) | もとにするもの |
|---|---|---|
| 知識・技能 | 「〜について理解している」「〜ができる技能を身に付けている」 | 内容とその取り扱いア次のような知識及び技能を身に付けること。 |
| 思考・判断・表現 | 「〜している」「〜することができる」 | 内容とその取り扱いイ次のような思考力・判断力・表現力等を身につけること。 |
| 主体的に学習に取り組む態度 | 「〜しようとしている」 | 科目の目標(3)(内容とその取り扱いには記述がない) |
作り方の流れ
- 単元の範囲を決める——内容のまとまり((1)〜(4))から単元を決め,「内容とその取扱い」を細分化した内容に分けて教科書の節と対応づける(森ほか(2023)のテンプレート)。
- 知識・技能——内容とその取り扱いのアの文末を「〜について理解している」「〜ができる技能を身に付けている」に変える。
- 思考・判断・表現——内容とその取り扱いのイの文末を「〜している」「〜することができる」に変える。
- 主体的に学習に取り組む態度——科目の目標(3)と「内容のまとまりごとの評価規準(例)」の態度欄をもとに,粘り強さと自己調整の2つの側面を入れて作る。
※左の学習指導案は,一つ前の学習指導要領かつ学校設定科目のものなので,あくまで参考程度にご覧ください。
情報Ⅰの内容一覧(森ほか(2023) 表1)
学習指導要領「情報Ⅰ」の内容を,単元の目標が作りやすい大きさに分けた表です。アの文末を「〜について理解している」「〜ができる技能を身に付けている」に,イの文末を「〜している」「〜することができる」に変えると,単元の目標(知識・技能/思考・判断・表現)になります。
| 内容の まとまり | 細分化した内容 | ア 知識及び技能 | イ 思考力,判断力,表現力等 |
|---|---|---|---|
| (1) 情報社会の 問題解決 | 情報や情報メディア | 情報や情報メディアの特性を理解すること | 目的や状況に応じて,情報と情報技術を適切かつ効果的に活用して問題を発見・解決する方法について考えること |
| 問題の発見・解決 | 情報と情報技術を活用して問題を発見・解決する方法を身に付けること | ||
| 情報に関する法規や制度 | 情報に関する法規や制度について理解すること | 情報に関する法規や制度及びマナーの意義についてそれらの背景を科学的に捉え,考察すること | |
| 情報セキュリティの重要性 | 情報セキュリティの重要性について理解すること | 情報社会において個人の果たす役割や責任についてそれらの背景を科学的に捉え,考察すること | |
| 情報社会における責任 | 情報社会における個人の責任について理解すること | ||
| 情報モラル | 情報モラルについて理解すること | 情報モラルなどについてそれらの背景を科学的に捉え,考察すること | |
| 情報技術 | 情報技術が人や社会に果たす役割と及ぼす影響について理解すること | 情報と情報技術の適切かつ効果的な活用と望ましい情報社会の構築について考察すること | |
| (2) コミュニ ケーションと 情報デザイン | メディアの特性 | メディアの特性について,その変遷も踏まえて科学的に理解すること | メディアとコミュニケーション手段の関係を科学的に捉え,それらを目的や状況に応じて適切に選択すること |
| コミュニケーションの手段 | コミュニケーション手段の特徴について,その変遷も踏まえて科学的に理解すること | ||
| 情報デザイン | 情報デザインが人や社会に果たしている役割を理解すること | コミュニケーションの目的を明確にして,適切かつ効果的な情報デザインを考えること | |
| 効果的なコミュニケーション | 効果的なコミュニケーションを行うための情報デザインの考え方や方法を理解し表現する技能を身に付けること | 効果的なコミュニケーションを行うための情報デザインの考え方や方法に基づいて表現し,評価し改善すること | |
| (3) コンピュータと プログラミング | コンピュータ | コンピュータや外部装置の仕組みや特徴,コンピュータでの情報の内部表現と計算に関する限界について理解すること | コンピュータで扱われる情報の特徴とコンピュータの能力との関係について考察すること |
| アルゴリズム | アルゴリズムを表現する手段について理解し技能を身に付けること | 目的に応じたアルゴリズムを考え適切な方法で表現すること | |
| プログラミング | プログラミングによってコンピュータや情報通信ネットワークを活用する方法について理解し技能を身に付けること | プログラミングによりコンピュータや情報通信ネットワークを活用するとともに,その過程を評価し改善すること | |
| モデル化 | 社会や自然などにおける事象をモデル化する方法について理解すること | 目的に応じたモデル化を適切に行うとともに,その結果を踏まえて問題の適切な解決方法を考えること | |
| シミュレーション | シミュレーションを通してモデルを評価し改善する方法について理解すること | 目的に応じたシミュレーションを適切に行うとともに,その結果を踏まえて問題の適切な解決方法を考えること | |
| (4) 情報通信 ネットワークと データの活用 | 情報通信ネットワーク | 情報通信ネットワークの仕組みや構成要素について理解すること | 目的や状況に応じて,情報通信ネットワークにおける必要な構成要素を選択すること |
| プロトコル | プロトコルの役割について理解すること | ||
| 情報セキュリティの確保 | 情報セキュリティを確保するための方法や技術について理解すること | 情報セキュリティを確保する方法について考えること | |
| データの蓄積 | データを蓄積,管理,提供する方法について理解すること | 情報システムが提供するサービスの効果的な活用について考えること | |
| 情報システム | 情報通信ネットワークを介して情報システムがサービスを提供する仕組みと特徴について理解すること | ||
| データの表現 | データを表現,蓄積するための表し方について理解し技能を身に付けること | データの結果の表現の方法を適切に選択し,実行し,評価し改善すること | |
| データの分析 | データを収集,整理,分析する方法について理解し技能を身に付けること | データの収集,整理,分析の方法を適切に選択し,実行し,評価し改善すること |
情報Ⅱの内容一覧(森ほか(2023) 表2)
| 内容の まとまり | 細分化した内容 | ア 知識及び技能 | イ 思考力,判断力,表現力等 |
|---|---|---|---|
| (1) 情報社会の 進展と 情報技術 | 情報技術の発展 | 情報技術の発展の歴史を理解すること | 情報技術の発展や情報社会の進展を踏まえ,将来の情報技術と情報社会の在り方について考察すること |
| 情報社会の進展 | 情報社会の進展について理解すること | ||
| コミュニケーションの多様化 | 情報技術の発展によるコミュニケーションの多様化について理解すること | コミュニケーションが多様化する社会におけるコンテンツの創造と活用の意義について考察すること | |
| 人の知的活動 | 情報技術の発展による人の知的活動への影響について理解すること | 人の知的活動が変化する社会における情報システムの創造やデータ活用の意義について考察すること | |
| (2) コミュニ ケーションと コンテンツ | コミュニケーションの形態 | 多様なコミュニケーションの形態とメディアの特性との関係について理解すること | 目的や状況に応じて,コミュニケーションの形態を考えること |
| メディアの特性 | 目的や状況に応じて,文字,音声,静止画,動画などを選択し,組合せを考えること | ||
| コンテンツの制作と評価,改善 | 文字,音声,静止画,動画などを組み合わせたコンテンツを制作する技能を身に付けること | 情報デザインに配慮してコンテンツを制作し,評価し改善すること | |
| コンテンツの発信の方法と効果や影響 | コンテンツを様々な手段で適切かつ効果的に社会に発信する方法を理解すること | コンテンツを社会に発信したときの効果や影響を考え,発信の手段やコンテンツを評価し改善すること | |
| (3) 情報と データ サイエンス | データ活用 | 多様かつ大量のデータの存在やデータ活用の有用性,データサイエンスが社会に果たす役割について理解すること | 目的に応じて,適切なデータを収集し,整理し,整形すること |
| データの収集,整理,整形 | 目的に応じた適切なデータの収集や整理,整形について理解し技能を身に付けること | ||
| モデル化 | データに基づく現象のモデル化の方法について理解し技能を身に付けること | 将来の現象を予測したり,複数の現象間の関連を明らかにしたりするために,適切なモデル化を行うこと | |
| データの処理 | データの処理を行い解釈・表現する方法について理解し技能を身に付けること | 将来の現象を予測したり,複数の現象間の関連を明らかにしたりするために,適切な処理,解釈・表現を行うこと | |
| データとモデルの評価 | データ処理の結果を基にモデルを評価することの意義とその方法について理解し技能を身に付けること | モデルやデータ処理の結果を評価し,モデル化や処理,解釈・表現の方法を改善すること | |
| (4) 情報システムと プログラミング | 情報の流れや処理の仕組み | 情報システムにおける,情報の流れや処理の仕組みを理解すること | 情報システム及びそれによって提供されるサービスについて,その在り方や社会に果たす役割と及ぼす影響について考察すること |
| 情報セキュリティの確保 | 情報システムにおける,情報セキュリティを確保する方法や技術について理解すること | ||
| ソフトウェア開発のプロセス | 情報システムの設計を表記する方法,設計,実装,テスト,運用等のソフトウェア開発のプロセスについて理解すること | 情報システムをいくつかの機能単位に分割して制作し統合するなど,開発の効率や運用の利便性などに配慮して設計すること | |
| プロジェクト・マネジメント | 情報システムのプロジェクト・マネジメントについて理解すること | ||
| プログラムの作成 | 情報システムを構成するプログラムを制作する方法について理解し技能を身に付けること | 情報システムを構成するプログラムを制作し,その過程を評価し改善すること |
情報Ⅰの主体的に学習に取り組む態度の例
| 領域 | 主体的に学習に取り組む態度の例 | 見取る場面・記録 |
|---|---|---|
| 情報社会の問題解決 | 情報モラルに配慮して情報を発信しようとしている。/解決する過程や解決案を自ら評価し改善しようとしている。 | 発信計画の作成過程/改善前後の案 |
| 情報デザイン | コミュニケーションの目的や伝える情報を明確にしようと粘り強く取り組もうとしている。/制作の一連の活動を振り返り,次時に改善することを決めようとしている。 | 企画書の作成過程/毎時の振り返りシート |
| プログラミング | プログラムが期待どおり動かないとき,原因を切り分けて試行錯誤しようとしている。/問題解決の結果を振り返り,改善しようとしている。 | 試行錯誤の記録/プログラムの版 |
| データの活用 | 分析の目的に照らして,データの選び方や分析の仕方を見直そうとしている。 | 分析計画の修正の記録 |
評価の方法と,見取る観点
| 方法 | 何を集め,何を見るか |
|---|---|
| 振り返りシート・フォーム | 毎時「分かったこと・できなかったこと」「次にどう取り組むか」。粘り強さ=困難への向き合い方/調整=次の取組を具体的に決めているか(国立教育政策研究所 2021 事例4) |
| ポートフォリオ | 単元を通した成果物と途中経過。改善の跡(版の変化)・目的の明確化の過程(国立教育政策研究所 2021, p.33;西岡 2003;森本ほか 2017) |
| 行動観察 | 試行錯誤を続けているか,助言をどう生かしているか。性格ではなく取組を見る(国立教育政策研究所 2021, p.10) |
| 自己評価・相互評価 | 自分の学習状況の把握と次の調整/作品の改善点の指摘と受け止め(国立教育政策研究所 2021, p.10) |
出典:国立教育政策研究所(2021)pp.9–10, 33–34, 38, 59–64/森ほか(2023)「高等学校情報科教員のための『指導と評価の計画』の作成を支援するテンプレートの検討」日本情報科教育学会誌 16(1), pp.87–95/西岡加名恵(2003)『教科と総合に活かすポートフォリオ評価法』図書文化/森本康彦ほか編(2017)『教育分野におけるeポートフォリオ』ミネルヴァ書房
単元の目標(3)は「〜理解している」で構いませんが,本時の学習目標は「この1時間のあと,生徒に何ができるようになってほしいか」を見て確かめられる形で書きます。3つの要素をそろえると,そのまま評価課題の設計図になります(Mager;鈴木 2002)。本時の目標は2つ以上あってもよく,目標ごとに評価方法を決めます。
| 要素 | 何を書くか | 書き方の型 |
|---|---|---|
| 目標行動 performance | 生徒が何をするのか。測りたい行動を1つ,観察できる動詞で書く。頭の中の働き(理解する・考える・分かる)は,それが見える行動(説明する・選ぶ・挙げる・記述する)に置き換える | 文末に「〜説明できる」「〜作成できる」「〜記述できる」 |
| 評価条件 conditions | そのとき何が与えられ,何が使え,どんな場面か。評価課題にそのまま再現する部分 | 「〜が示されたとき」「〜が与えられ,〜が使えるとき」「〜について」 |
| 合格基準 criterion | どこまでできれば合格か。数・質(含めるべき要素)・精度(単位・桁)・産出物の要件・時間 | 「すべて」「2つ」「〜という語を用いて」「〜の2つの要件を満たす」 |
目標行動
| 観点 | 動詞の例(→ 生徒がすること) |
|---|---|
| 知識・技能 理解している/技能を身に付けている | 挙げる・述べる(用語・特徴)/選ぶ・識別する(正しいもの・該当するもの)/説明する(仕組み・特徴・違い)/分類する(データの尺度,メディアの種類)/例を挙げる/変換する(2進数⇔10進数,単位)/求める(データ量,平均・中央値,相関係数)/読み取る(グラフ・表・構成図)/作成する(表・グラフ・フローチャート)/記述する(条件式・プログラムの一部)/操作する(表計算ソフトで並べ替え・集計する,画像を加工する)/表現する(手順をフローチャートで) |
| 思考・判断・表現 考え・判断し・表している | 比較して選ぶ(目的に合う手段・尺度・グラフ)/理由を説明する/根拠を示して判断する/意見を述べる(根拠を挙げて)/解釈する(データの傾向・相関)/予測する(プログラムをたどって出力を)/設計する(アルゴリズム・レイアウト・調査)/作成する(仕様を満たすプログラム・目的に合うコンテンツ)/モデル化する/評価する(案・作品を規準に照らして)/改善案を提案する |
| 主体的に学習に取り組む態度 | 〜しようとしている(粘り強く取り組む/振り返って次の取組を調整する/活用しようとする) |
評価条件
- 与えられる資料:空欄つきのプログラム/家庭内LANの構成図/散布図と相関係数/情報発信の事例文/2つのポスター案/30人分のデータ表
- 使えるもの・使えないもの:教科書を見ずに/表計算ソフトを使って/プログラミング環境で実行しながら/電卓可/資料の持ち込み不可
- 場面・相手:学級の生徒に向けて/来場者に向けて/班で役割分担して/個人で
合格基準
合格基準は「採点基準・ルーブリックのBにそのまま写す部分」です。
- 数量:空欄すべて/2つ挙げる/3問中2問/3組のテスト入力すべてで期待どおりの出力になる
- 質・含める要素:IPアドレスという語を用いて/根拠となるデータを示して/どの条件が成り立つかに触れて/目的・受け手・手段の3点を含めて
- 精度・単位:バイト単位で/小数第1位まで/単位を付けて/誤差±1以内
- 産出物の要件:見出し・図・出典の3つを含む/繰り返しと条件分岐の両方を含む/3組のテスト入力で期待どおり動く
- 時間:5分以内に/1コマの中で
出典:Mager, R. F. Preparing Instructional Objectives(performance/conditions/criterion)・鈴木克明(2002)『教材設計マニュアル』北大路書房(目標行動・評価条件・合格基準)
| 領域/ 観点 | 本時の学習目標 | 評価条件 | 合格基準 | 目標行動 |
|---|---|---|---|---|
| 情報社会の問題解決/知技 | 発信者・日付・出典の記載があるWeb記事が示されたとき,その信ぴょう性を確かめるために見るべき点を,記事のどの記述に当たるかを示して3つ挙げられる。 | 発信者・日付・出典の記載があるWeb記事が示されたとき | 記事のどの記述に当たるかを示して3つ | 挙げられる |
| 情報社会の問題解決/思判表 | SNSでの情報発信の事例文が示されたとき,その発信の改善策を,関係する法規またはマナーを根拠として示して1つ提案できる。 | SNSでの情報発信の事例文が示されたとき | 関係する法規またはマナーを根拠として示して1つ | 提案できる |
| 情報デザイン/知技 | 2つのポスター案が示されたとき,両案の違いを,配色・文字の大きさ・情報の階層の3つの観点それぞれについて,案のどの部分かを指して説明できる。 | 2つのポスター案が示されたとき | 配色・文字の大きさ・情報の階層の3つの観点それぞれについて,案のどの部分かを指して | 説明できる |
| 情報デザイン/思判表 | 学校紹介の素材(写真3枚と文章)と受け手(来場者)が示されたとき,伝えたい順に情報が階層化されている・各写真とその説明文が隣接している,の2つの要件を満たすレイアウト案を作成できる。 | 学校紹介の素材(写真3枚と文章)と受け手(来場者)が示されたとき | 伝えたい順に情報が階層化されている・各写真とその説明文が隣接している,の2つの要件を満たす | 作成できる |
| プログラミング/知技 | 条件分岐を含むプログラムが示されたとき,その出力を,2つの入力それぞれについて,どの条件が成り立つかに触れて説明できる。 | 条件分岐を含むプログラムが示されたとき | 2つの入力それぞれについて,どの条件が成り立つかに触れて | 説明できる |
| プログラミング/思判表 | 仕様(入力・出力・処理の条件)と3組のテスト入力が与えられ,プログラミング環境が使えるとき,繰り返しと条件分岐の両方を含み,3組すべてで期待どおりの出力になるプログラムを作成できる。 | 仕様(入力・出力・処理の条件)と3組のテスト入力が与えられ,プログラミング環境が使えるとき | 繰り返しと条件分岐の両方を含み,3組すべてで期待どおりの出力になる | 作成できる |
| ネットワーク/知技 | 家庭内LANの構成図が示されたとき,ルータの役割を,IPアドレスという語を用いて2つ説明できる。 | 家庭内LANの構成図が示されたとき | IPアドレスという語を用いて2つ | 説明できる |
| データの活用/知技 | 30人分のデータ表が与えられ,表計算ソフトが使えるとき,平均値と中央値の両方を,関数を使って小数第1位まで求められる。 | 30人分のデータ表が与えられ,表計算ソフトが使えるとき | 関数を使って小数第1位まで | 求められる |
| データの活用/思判表 | アンケートの目的(例:満足度の平均を学級間で比べたい)が示されたとき,その目的に適した尺度水準とその理由を,尺度の性質(順序の有無・間隔の等しさ・原点の有無)のうち該当するものを挙げて述べられる。 | アンケートの目的(例:満足度の平均を学級間で比べたい)が示されたとき | 尺度の性質(順序の有無・間隔の等しさ・原点の有無)のうち該当するものを挙げて | 述べられる |
出典:国立教育政策研究所(2021)pp.33–34, 41–64(内容のまとまりごとの評価規準・各事例の単元の評価規準)を本時レベルに落とした作例
| 修正前 | 足りないところ | 修正後 |
|---|---|---|
| ルータの役割を理解する。 | 動詞が観察できない/条件も基準もない | 家庭内LANの構成図が示されたとき,ルータの役割を,IPアドレスという語を用いて2つ説明できる。 |
| 画像のデータ量を正しく計算できる。 | 「正しく」は基準にならない/条件(何が与えられるか)がない | 画像の縦横の画素数と1画素あたりのビット数が示されたとき,その画像のデータ量をバイト単位で求められる。 |
| 授業で学んだことをもとに,情報の信ぴょう性について考えることができる。 | 「授業で学んだこと」は条件にならない/「考える」は観察できない/基準がない | 発信者・日付・出典の記載があるWeb記事が示されたとき,その信ぴょう性を確かめるために見るべき点を,記事のどの記述に当たるかを示して3つ挙げられる。 |
| 学校紹介のレイアウト案を作成し,配置の理由を説明できる。 | 測る行動が2つ(作品と記述)/要件・数がない | 目標A:素材と受け手が示されたとき,…の2つの要件を満たすレイアウト案を作成できる。 目標B:作成した案について,配置の理由を情報デザインの考え方を用いて2つ説明できる。 |
目標や生徒の状況に応じて,手立てを工夫する必要があります。様々な教授法がありますが,代表的なものをいくつか掲載しておきます。
ジグソー法Jigsaw
- 何をする
- 1つのテーマを3〜4の資料に分け,各自が1つの資料の「専門家」になってから,専門家グループ→元のグループに戻って教え合い,全員で課題を解く。
- 向く場面
- 覚えることが多く,分担して学べる内容(例:4つの探索・整列アルゴリズムをそれぞれ担当して説明し合う)。
反転授業Flipped classroom
- 何をする
- 知識の説明(動画・教科書の該当ページ・プリント)を授業前に済ませ,授業時間は練習・実習・質問に使う。
- 向く場面
- 実習時間を長く取りたい単元(プログラミング・データ分析)。説明が長くなりがちな内容。
スモールティーチャーPeer tutoring
- 何をする
- 先に課題を終えた生徒が,周りの生徒の質問に答えたり手順を見せたりする。
- 向く場面
- 実習で進度差が出るとき。教師1人では机間指導が回りきらないとき。
ペア・プログラミングPair programming
- 何をする
- 2人1組で,1人が入力(ドライバー),1人が考えて指示・確認(ナビゲーター)。数分ごとに交代する。
- 向く場面
- 操作に自信のない生徒がいるとき。1人だと手が止まる課題。
ミニッツペーパーMinute paper
- 何をする
- 授業の最後に「今日分かったこと」「まだ分からないこと・次にやること」を1〜2行で書かせて回収する。
- 向く場面
- 毎時間。態度の見取り(振り返り・自己調整)と,次時の導入の材料を兼ねる。
学習の展開(導入・展開・まとめ)を組み立てるとき,ガニェの9教授事象を頭の片隅に置いておくことを勧めます。
| 段階 | 事象 | ねらい |
|---|---|---|
| 導入 | 1 注意を引く | 学習に向かう構えを作る |
| 2 目標を知らせる | 何ができるようになるかを共有する | |
| 3 前提条件を思い出させる | 既習事項を呼び起こす | |
| 展開 | 4 新しい事項を提示する | 本時の内容を示す |
| 5 学習の指針を与える | やり方・考え方を示す | |
| 6 練習の機会を作る | 自分でやってみる | |
| 7 フィードバックを与える | 正誤と理由を返す | |
| まとめ | 8 学習の成果を評価する | 目標の達成を確かめる |
| 9 保持と転移を高める | 次につなげる |
9教授事象の組み合わせ
9教授事象の組み合わせ方は柔軟に考えてよい。1→9の事象を必ず順番に進めないといけないわけでも,1回の授業の中ですべての事象が含まれていないといけないわけでもない。そして,1回の授業の中で,4〜7が複数回現れる授業もある。なぜその事象を入れないのか?なぜその順番なのか?を考えながら点検するとよい。
出典:Gagné, R. M., Briggs, L. J., & Wager, W. W. Principles of Instructional Design/鈴木克明(2002)『教材設計マニュアル』北大路書房/稲垣忠(2025)『教育の方法と技術 ver.2』p.34